狙われてますっ!




 汐音は震える手で、その茶封筒をつかみ、職場のエレベーターに乗っていた。

「あら、えーと、狭間(はざま)さん。
 大丈夫? 顔色悪いけど」
と秘書の関口真琴(せきぐち まこと)に汐音は話しかけられた。

 手入れのいい栗色のロングヘアをしたスレンダーな美女だ。

「いや、それが今、わらしべ長者に会いまして」
と言いながら、汐音は手にある茶封筒を見せた。

 中には近くのフレンチのお店のお食事券、一万円分が入っていた。

「あら、すごいじゃない。
 どうしたの?」

 実は……、と汐音は公園でたまたま一緒になった人におむすびを渡したら、これをやる、と言って、この封筒をもらったことを明かした。

「へえー、いいわねえ。
 でも、その場合、わらしべ長者なのは、くれた人じゃなくて、狭間さんじゃないの?」
と言って、真琴は笑う。
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