狙われてますっ!
 汐音がなにかやらかしてそうだ。

 仕事で訪れない部署の人間とも親しくなるチャンスなのに、汐音の世話の方に手をとられているような、と思いながら、渡真利がすぐそこまで歩いて来ていた。

「汐音ちゃん」
ともふもふさんが手を握ってくる。

「いい店知ってるんだ。
 行こうよ」

 ……こ、此処もいい店ですよ?

「荷物とっておいでよ、さりげなく」
ともふもふさんは、やさしく囁いてくる。

 やはり、この人は殺し屋なのか?

 私を狙っているのか?

「ギャング団じゃなかったのか……?」
と突っ込んでくれる渡真利がまだ到着していなかったので、汐音の妄想は暴走する。

 ()る? 殺られる?
 殺る?
 殺る?
 殺る?

と限りなく、殺る? に傾いたとき、誰かが汐音の手をつかむ、もふもふさんの手をつかんだ。

父母(ふも)さん、その辺で」
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