狙われてますっ!
 そこで握り返したら、私を好きだということにならないですか?
と汐音は思う。

 だが、渡真利は熱い男の友情的なものが好きだった。

 去りゆく父母の背を見送りながら、渡真利は腕組みして頷いていた。

「いい男だな」

 ……そうですかね。

 男が思ういい男と、女が思ういい男は違いますけどね。

 なんか今、怖かったですし……と思う汐音の前で深く頷き、渡真利は言った。

「うん。
 そう、悪くないアイディアだ」

「は?」

「俺はお前を好きだということにしよう」

「えっ?」
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