狙われてますっ!
朝、仕事が一段落ついた頃、汐音たちは給湯室で密かにお茶をしていた。
輝美と汐音、それぞれが週末の花火での出来事を語る。
汐音はキスのところだけ省いて話した。
そこを省くと、ふたりで大きな花火を見ようとして、一発しか見られなかったマヌケな話になってしまうのだが……。
「マヌケね」
と一緒に食事をしたとき、この話をすでに聞いていたはずの輝美が、また、そう罵ってくる。
「いいんですよ~。
すごい努力して一発しか見られなかったのが、加倉井さんもツボだったみたいで、ふたりでめちゃめちゃ笑えましたから」
そう汐音が反論すると、
「それは大事なことよね」
と真琴が言い出した。
「笑いのツボが同じって大事なことよ。
……なによ、汐音」
と真琴がこちらを見る。
「いえいえ。
ちょっと意外だったので」
生真面目な真琴さんが、そんなところに重きを置いているとは、と思ったのだ。