狙われてますっ!
「前、あんたに捕まったことがあるからよっ!」
「こっ、この街は犯罪者だらけですよ~っ!」

 思わず、汐音はそう叫んでいた。

 だがまあ、とりあえず、樹里亜は切れ者ではなかったようだ。

 まあ、スパイなのに駐車違反だか、一時停止だかで捕まっている辺りで既にあれなんだが……と汐音は思う。

 意外にそのときは往生際がよかったので、記憶になかったのだろうか?
 あのレストランのウェイターさんみたいに。

 そう汐音が思ったとき、樹里亜が間合いを詰めながら言ってきた。

「ま、実際、捕まえたの、あんたじゃなかったけどね。
 あんたはたまたま、私を捕まえた婦警たちのミニパトと出会って、お疲れ様です~って笑顔で話してただけだったから」

「じゃあ、私、なんにも関係ないじゃないですかっ!」
「だって、あんた、駐禁で捕まった私の前で、笑って話してたのよっ!」

 許せないっ、と樹里亜は叫んだ。

「あの場に居た婦警全員、くたばればいいのよっ!」

 ひーっ!
 日坂さんといい、交通違反で捕まった恨みっ、深すぎる~っ!
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