狙われてますっ!
「痛いっ。
 私がなにしたって言うのよっ!」
と言う樹里亜の叫びに、駆けつけた若い捜査員が、

「……ごもっとも」
と苦笑いしていた。

 だが、可愛い汐音にナイフを突きつけられかねない状況だったことに腹を立てていた渡真利は、冷たく樹里亜を見下ろし、言い放つ。

「莫迦な女だ。
 自分から名乗り出てくるなんて。

 関係ないと最後までシラを切ればよかったのに。
 ……俺なら切ってる」

 確かにな、と汐音は思っていた。

 例えば誰かに、繁と渡真利が同一人物ではないかと詰め寄られても、渡真利なら、その迫力でシラを切り通していただろう。

 そのとき、
「汐音っ」
と声がした。

 求の声だ。

「加倉井さんっ」
と汐音は求の許に走り寄る。
< 386 / 438 >

この作品をシェア

pagetop