狙われてますっ!
父母はいつも立ち寄るコンビニの前で起こった騒ぎを呆然と見ていた。
樹里亜が腰を押さえたまま、見知らぬ男たちに連れていかれようとしている。
だが、野次馬たちの視線は樹里亜よりも、
「なんで加倉井さん、此処に居るんですかっ?」
「お前に会えないかなと思って、ウロウロしてたんだっ。
早く連絡しておけばよかったっ。
こんなことになるのならっ」
と抱き合っている二人の方を向いている。
「なに?
なにかの撮影?」
「誰だっけ?
この女優さんたち。
新人さん?」
騒いでいるメンバーに美形が多かったせいか。
目の前で起こっていることに現実感がないのか。
みんな撮影と勘違いして、ぼんやり眺めているようだった。
こんなことになるのなら、早く連絡しておけばよかったっ、と言う求の横を通りながら、樹里亜がやけくそのように叫んでいた。
「ほんとよっ。
あんたがこの女、どっかに誘っててくれれば、こんなことにならなかったのにっ。
男なら、迷わず、格好良く誘いなさいよーっ!」
お幸せにっ!
と樹里亜は怒ったように叫び、パトカーに乗って行ってしまう。
そんな樹里亜に汐音は、
「あ、ありがとうございますっ」
と何故か、お礼を言っていた。