狙われてますっ!



「お前は今日は此処まででいい。
 外へ出る用事があるから送ろう」

 夕方、署ではまだ樹里亜の事情聴取は続いていたが、汐音は渡真利にそう言われ、連れて帰られた。

「あとで費用は出るが、引っ越しの金は一時立て替えになるぞ。

 金はあるのか?
 立て替えようか?」
と運転する渡真利に訊かれる。

「……はあ、なんとか」

 そんな具体的な引っ越しの話をされても、まだ此処を去るという現実感もなく、汐音は、ぼんやり、そう答えた。

 車の窓から、いつもおむすびの具やお惣菜を買い込んでいたスーパーが見えた。

 私、もう去るんだ、此処……。

 大学は家から通っていたし。
 警察学校も警察に入ってからも寮。

 初めての一人暮らしだった。

 突然の終わりに無性に寂しくなる。
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