狙われてますっ!
「あ、ありがとうございました」
と言って汐音は降りようとしたが、ドアを開けようとした手をつかまれ、止められる。

「汐音、待てっ」
と厳しい声で言われる。

 なっ、なにか私、ご無礼をっ?
 畳の(へり)も敷居も踏んでませんよっ、と畳も敷居もないのに思ってしまう。

 子どもの頃から、繁によくそういうことを注意されていたからだ。

 だが、渡真利は汐音の腕をつかんだまま、汐音を見つめ、言ってきた。

「聞いてくれ、汐音。
 お前の前で、俺が渡真利になることはもうないだろう。

 だから、繁に戻ってしまう前に聞いてくれ」

 な、なんですかっ?
 なにか叱られるのだろうかっ、
と汐音は怯える。

 繁は、よく褒めてくれて、叱らないキャラなので。
 普段抑えている自分を罵りたい思いを今、この瞬間、ぶつけておこうというのだろうか、と思い、身構えた。
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