狙われてますっ!
「今すぐ車を降りるんだ、汐音」

 二度と振り返るな、と渡真利は言う。

「明日、職場に挨拶に行ったら、お前の仕事は終わりだ。
 俺が渡真利として、お前に関わることはこの先ない。
 
 俺も可愛い従妹じゃなくて、ひとりの女としてお前を見たことは忘れることにする」

 きっと、一瞬見た幻だったんだ……。

 そう渡真利は言った。

「さよなら、汐音」

 渡真利は唇に触れかけてやめ、額にキスすると、

「よしっ。
 さっさと降りろっ」
と、今すぐ、この車を爆破するっ、くらいの勢いで言ってくる。

 は、はいっ、と慌てて汐音は車を降りた。

 汐音がアパートに入り、電気をつけるまで、渡真利は見てくれていたようだった。

 去っていく車の音に向かい、汐音はカーテン越しに頭を下げる。
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