狙われてますっ!




 昼。
 ちょっと仕事に行きづまった加倉井求(かくらい もとむ)は職場近くのベンチで思索に(ふけ)っていた。

 ……一度、頭を真っ白にしようと思って此処に来たのに、どうしても仕事のことを考えてしまうな、と思ったとき、それが視界に入った。

 いびつな形のおむすびだ。

 コンビニなどのカッチリ綺麗に成形されたものではない。

 人の手でむすばれたおむすびだった。

 それもかなり不器用な人間が作ったもののようだった。

 だが、味のある形をしていて、程よく塩がきいてそうで、上手く握りきれてない米がふかふかな感じだった。

 元は照りがあったのだろう海苔がもうしんなりとして、おむすびと一体化している様も美味しそうに見えた。
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