狙われてますっ!
「汐音」
と真琴は声を落とし、辺りを気にするようにして呼びかけてくる。

「昨日、私、居たのよ。
 あのコンビニ近くの雑貨屋に」

「えっ?」

「渡真利さん、警察官だったのね」
と深刻そうな顔で言う真琴は、汐音が女性警官だったことは、別にどうでもよさそうだった。

「そうなんですよ。
 実は……」

 真琴さんには、少しだけ事情を話して口止めしよう。
 そう汐音が思ったとき、急にテンション上げて、真琴が言ってきた。

「すごかったわっ。
 目の前で犯人逮捕した渡真利さんっ。

 格好良かった~っ!」

 え~と……。
 仕事中の渡真利さんが格好いいってところは、まあ同意なんですけど。

 昨日に関しては、渡真利さん、なんかしましたっけね……?
 投げたの私だし、連行してったの別の人だし。

 だが、現場にクールな表情で立っているだけで、真琴には、渡真利が一番輝いて見えたのだろう。

「ほんと格好よかった~っ。
 お巡りさんって素敵ねっ。

 汐音っ、あんたも警官なんでしょっ?
 渡真利さんと親しいのなら、渡真利さんとの仲、取り持ってよっ」

 えーっ!?
 松本さんはーっ!?

 松本さんもお巡りさんなんですけど~っ!?
と思いはしたが、渡真利好みの『手のかからないお姉様タイプ』の真琴を渡真利に勧めること自体はやぶさかではなかった。

「え、えーと。
 じゃあ、あの、渡真利さんに言っておきますよ。

 松本さんも一応……」
と小さな声で松本のために付け足してみる。


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