狙われてますっ!


 結局、
「これはこれで美味い」
とみんな、その場で食べてくれた。

「まあ、汐音の得意料理だからな」
とやさしく繁が言ってくれる。

 今、此処に渡真利さんの人格が居なくてよかった……、
と汐音が安堵したとき。

 母、利子が作ってあった料理を冷蔵庫から出しながら、訊いてきた。

「ところで、ふたりの出会いは?
 どんな感じだったの?」

 興味津々、利子は二人を見る。
 汐音はチラ、と求を見上げたあと、照れながら、母に向かい言った。

「公園でバッタリ出会って。

 加倉井さんが、その……

 物欲しそうに私を見てたから……」

「いやっ、おむすびをだろーっ」

 慌てて求が叫び、繁たちが笑い出す。

 ダイニングテーブルの上には、母の作った豪華な料理の隙間に、まだ食べていなかった汐音の分のおむすびが、小さくちょこんと載っていた。



                           完




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