狙われてますっ!

ふたたび、汐音と求のその後~




 その日、汐音は求のマンションを訪れていた。

 求も少しずつ荷造りをしているようで、部屋の隅にはダンボールが積み重なっていた。

 ふたりの職場の中間地点に家を借りて住むことになったからだ。

 汐音は転勤が多いので、しばらくは借家で済ませようという話になっていた。

 この風景もあとちょっとで見納めか、と汐音は大きな窓から街を見下ろす。

 結構遅い時間だが、まだ街は明るく、たくさんの車が行き交っていた。

 仕事忙しいし、結局、あんまり此処には来れなかったな。

 そう思いながら、汐音はちょうど視界に入る、この間まで勤めていたビルを眺めていた。

「潜入捜査が終わって、いつもの仕事に戻って――。
 懐かしかったんですけど、ちょっと寂しかったです」

 そう呟いたとき、求が側に来た。

 恥ずかしいので、あまり目を見ないようにして言う。

「……前みたいに、バッタリ道で加倉井さんに会うとかなくなってしまったので」

「あと少しじゃないか」
と言いながら、求がそっと汐音を抱き寄せる。
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