狙われてますっ!
「誰にも言わないでくださいよ。
 誰かに話すと恐ろしいことが起こりますよ……」

 今現在、起こってますっ、と武志は悲鳴を上げそうになる。

 美女に耳許で囁かれるという、考えようによっては嬉しい状況なのだが、汐音の囁きが怖い。

「……あなたが悪いんですよ。
 悪いことするから」

「す、すみませんっ。
 もうしませんっ」
と謝ったとき、すっと汐音が手を離して離れた。

 ちょうど求が戻ってくるところだったようだ。

「あのー、狭間さん」
と求の方を見ている汐音に呼びかける。

「汐音でいいです」

「はあ、そうですか、汐音さん」

 悪い記憶が蘇らなくていいので、こちらとしても、狭間さんでない方がいい、と思いながら、武志は言った。
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