狙われてますっ!
 まさか、こんなところに敵がっ!?
と汐音は身構え、振り向いたが、後ろには真琴しか居なかった。

 真琴は、いつもの穏やかなそうな微笑を浮かべたまま言ってくる。

「あらあら。
 汐音のお世話はずっと私の方が焼いてると思ってたけど。

 私にはなんの恩返しもないのねえ」

 顔は笑顔のままなのだが、輝美と二人、ひっ、と怯える。

 なんか怖いオーラが給湯室に溢れてるっ!
と逃げ腰になる汐音に、輝美が耳打ちしていきた。

「あ、あんたっ、もうひとりイケメンは居ないのっ?」

「ええっ?」

 一瞬、求が頭に浮かんだが、すぐに、いやいや、と打ち消す。

 次に、繁が浮かんだが、そういう訳にもいかない。

 その次に浮かんだのは、弟の(りん)だった。

「こ、高校生ならっ」
と苦し紛れに言ったが、微笑みのマドンナ真琴は意外にも、

「……いいわよ」
と言ってきた。

 いいんだっ!? と輝美と二人、二度見する。



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