狙われてますっ!
「他所事を考えながら、データ入力とかしていると、この世に数字とテンキーと私しかなくなって、逆に集中できるんですよね~」
という話を帰りにロッカーで真琴にしていると、
「なにそれ」
とおじさんと同じ口調で言われた。
「で、他所事ってなに考えてたの?」
「いえ……」
いえ、土曜日、なにを着て行こうかと……と言いかけ、汐音は慌てて口を閉ざした。
まずい。
イケメンを紹介しろと言われたとき、つい、加倉井さんの存在を伏せてしまったことがバレてしまうっ。
微笑む真琴と鬼の面を被った輝美を松明片手に家にやってくる妄想をする。
焼き討ちにあうっ、と怯えた汐音は笑顔を作って言った。
「いえ、明日のおむすび、なんにしようかなと思って」
「マメねえ」
と真琴に言われたが。
本来、汐音はまったくマメな性格ではない。
単に、
『毎日、おむすび作って偉いぞ~』
と繁に褒められたからと、おむすびが切っかけで求と出会ったので、なんとなく作り続けているだけだ。