狙われてますっ!




他所事(よそごと)を考えながら、データ入力とかしていると、この世に数字とテンキーと私しかなくなって、逆に集中できるんですよね~」

 という話を帰りにロッカーで真琴にしていると、
「なにそれ」
とおじさんと同じ口調で言われた。

「で、他所事ってなに考えてたの?」

「いえ……」

 いえ、土曜日、なにを着て行こうかと……と言いかけ、汐音は慌てて口を閉ざした。

 まずい。
 イケメンを紹介しろと言われたとき、つい、加倉井さんの存在を伏せてしまったことがバレてしまうっ。

 微笑む真琴と鬼の面を被った輝美を松明(たいまつ)片手に家にやってくる妄想をする。

 焼き討ちにあうっ、と怯えた汐音は笑顔を作って言った。

「いえ、明日のおむすび、なんにしようかなと思って」

「マメねえ」
と真琴に言われたが。

 本来、汐音はまったくマメな性格ではない。

 単に、
『毎日、おむすび作って偉いぞ~』
と繁に褒められたからと、おむすびが切っかけで求と出会ったので、なんとなく作り続けているだけだ。
< 78 / 438 >

この作品をシェア

pagetop