彼は友達
「…俺たちもしてみねー?」
「な、なななんでそうなるの」
「他のヤツよりも先にオトナの階段上ってみたくね?」
「…(ちょっと興味ある)」
「『初めてのキスは中2のとき』ってちょっとカッコいーじゃん」
「いやでもやっぱりだめ」
「なんで」
「修学旅行に行ったらきっと『キスしたことある?』とかいう話になる
じゃない、で、あるっていったら今度は『誰と!』って追求されて、その
ときに『相手は石川』だなんて誰にもいえないよ」
「…んなもんいわなきゃいーじゃん」
「それもファーストキスの相手が彼氏じゃなくて友達でしたなんていったら、
私きっと『中島さんて見かけによらず遊んでるんだ』って噂されちゃうよ。
そんなのイヤ!」
「だーかーらー、もう黙っとけ」
つかまれていた手首を引っ張られて、石川の顔が近づいてきて、もうわけ
わかんなくて私は目を閉じるしかなかった。唇にはふわっと柔らかな感触と
甘い匂い。不思議なことに、唇が触れ合っていることよりも石川がこんなに
近くにいることにドキドキしていた。
「…イチゴの味がする」
「あー、さっきカキ氷食ったからかな」
「ムードも何もあったもんじゃないね」
意外とあっけなかった私達のファーストキス。
でもキスの威力ってすごい。これまではただの友達だった石川がたった
一度のキスでちゃんと男の子に見えるようになったんだから。でもこの
ときは、まさか2回目も3回目のキスも石川が相手になるなんて思っても
いなかった。