彼は友達


初めて石川とキスをしたのは2年生の夏。といっても別に恋愛感情があった
わけじゃない。
もともとクラスが同じで仲がよかった私たちは、お互いの友達と出かけた
夏休みの花火大会で偶然出会った。そして石川が家まで送ってくれた帰り道、
お互いにキスの経験がなかった私たちは好奇心からほんの一瞬だったけど
唇を重ねて、周りの友達よりも1歩先に大人になれた気がしてた。



その後石川は何人かの女の子と付き合ってきたけれどあまり続かず、気付くと
いつも私のところに戻ってきた。その度に繰り返される石川からのキスは、
回数を重ねる毎にただ唇を合わせるだけではなくなって、経験値ばかりが
広まっていることを実感させられる。私はまだ誰とも付き合ってないのに、
友達に『キスしたことある?』なんて聞かれると石川のことを思い出して
しまって苦笑いするしかない。
どうせ石川にとっては私とするキスなんてほんの気まぐれでしかないんだ。



一週間後、石川のそばには何事もなかったかのように他の女の子がいた。
その子は放課後もテニスコートに張り付いて、テニス部の練習を見ていた。
きっと石川が前の彼女と別れるのを待っていて、やっと自分の番がきたと
思って張り切っているんだなあ、と思うとため息が出た。


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