告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜
そうだよね。こんなに心配掛けて、怒られて当然……。
「俺だって呼ばれたい」
「…………はい?」
あまりにこの雰囲気にそぐわない言葉に、ハッと顔を上げると、水瀬くんは整った顔を崩し、ムスッとした不機嫌な表情をしていた。
そして、私の両手首を掴み拘束して、グッと距離を詰める。大きな目に見つめられ、じりじりとほおが熱を持つ。
「俺の名前、知ってるよね」
「……うん、もちろん」
「呼んで、今すぐに」
「えっ……?水瀬奏多、くん?」
「苗字いらない」
「奏多くん」
初めて呼ぶその名前は、水瀬くんにしっかりと届いたようで、呼ばれた本人は不機嫌な表情を一変させ、満足そうに口角を上げた。
そして、私の手首を掴んだまま口を開く。
「凛子」
────ぶわっ
水瀬くんの優しく低い声で名前を呼ばれた瞬間、一気になんとも言えない幸福感が湧き上がってきた。
なんでこんなに嬉しいの?ただ、名前を呼ばれただけなのに。足元がふわふわする。
今まで誰かに名前を呼ばれ、こんな風に特別な何かを感じたことはない。勿論陸くんにも。
水瀬くんは返事をすることなく顔をただ赤くする私を覗き込み、目を見開いた。