告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜
そう、浴衣でキレイに着飾った愛理先輩の隣を歩いていたのは、奏多くんだった。
見間違えるわけがない。
ずきん、ずきんと胸が痛む。楽しかった気持ちが一気に落ち込んでいく。
きっと、奏多くんは落ち込んだ愛理先輩を元気付ける為にここに来たんだろう。きっとそう、そんなわけない。
そうじゃなかったら、私への誘いをなかったことにしてまで────。
「凛子」
「っ、ご、ごめん」
陸くんに背中を叩かれ、ハッとする。ダメだ。せっかく陸くんが一緒に来てくれてるんだから、花火を楽しまなきゃ。
けど、私の心を見透かすように、陸くんは私の肩を掴んだ。
「絶望感丸出しの顔して。今日断られたのって水瀬なんだろ?」
「えっ……う、うん。そうなんだ、実は」
「へぇ、アイツの大切な用事って、凛子落ち込ませてまで他の女と花火に来ることだったんだな」
「っ、違う!」
「は?」
「奏多くんにも、きっと事情があるの」
陸くんは静かに言った言葉に対して、反射的に否定する。
何も知らないのに、奏多くんを悪く言われたくない。私の反応に目を丸くした陸くんは、ふっと笑い私の頭を撫でる。
「じゃあ聞きに行こうぜ」
「…………え」
「もやもやしたまま花火見るの、嫌じゃね?ハッキリさせよう。私のこと断ったのに何でここに?って」
「それはっ」
「それで、おまえを傷つけるような回答ならアイツぶん殴って清々しい気持ちで花火見よう」
言葉は乱暴だけど、私の頭を撫でる手はどこまでも優しい。
少しだけ泣きそうになる私に、陸くんは呟く。
「今の俺は、どんな時も凛子の味方だから」
私は、陸くんに手を引かれるまま、二人が向かった方へ人混みを掻き分け歩き出した。
※※※※
「あそこ」
しばらく歩いて、陸くんが指さした先には何故か奏多くんが一人で立っていた。
愛理先輩はちょうどいない。トイレにでも行ったのかな。
「今がチャンスだな」
「り、陸くんは?どうするの?」
「俺は少し離れたところで待ってる。見られてると思うと話しにくいだろ」
「…………」
「モヤモヤ、晴らしてこいよ」
陸くんはそう言うと、さっき来た道を戻って行ってしまった。
けど、今がチャンスだ。