告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜
「片山さんさ」
「……はい」
「お父さんも、お母さんも普通に揃ってるんでしょ?」
「……は、はい」
「私にはね、おばあちゃんが死んじゃったら、仕事ばかりで家に帰ってこないお父さんしかいないの」
一気に空気が重くなる。愛理先輩の悲しさが伝わってきて、何も言えない。
私が無言になると、先輩は話を続けた。
「学校に友達はいるよ?けど、心から私を理解してくれるのは、ずっと近くにいてくれた奏多だけなの」
「……奏多、くんが」
「片山さんは私にないものを持ってるでしょ?けど、私には……奏多しかいないの」
まるで、深い悲しみの底に引き摺り込まれるようだった。
そんな錯覚に陥ってしまうほどに、私は何も言えはしなかった。
先輩の家庭の事情は少しは知っている。そして、奏多くんのことを大切に思っていることも。
────けど、私だって奏多くんが好きだ。私が好きなのは、どこを探したって奏多くんしかいない。
「ご、めんなさい……けど、私」
言葉を続けようとした。けど、私と視線を合わせた愛理先輩の目から、大粒の涙が溢れたのを見て、私はぐっと言葉を飲み込んでしまった。
なんで、どうして、ずるい。なんで泣くの……?
けど、先輩はおばあちゃんを失いそうで、そして奏多くんまで近くからいなくなってしまったら、一体どうなってしまうの?
脳内をぐちゃぐちゃになった感情がぐるぐると回っている。私は、どうしたら────。
「お願い……」
「……え?」
「お願い、私から奏多を奪わないで」