告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜
愛理先輩の言葉はあまりにも悲しくて、あまりにも一人の女の子として弱々しくて、けど、私の心に突き刺すのには充分な強い言葉だった。
愛理先輩は、涙を拭いながら私の横をすり抜け、いなくなってしまった。
「なに、それ」
私は、その場に脚を縫い付けられたように動けないままだった。
胸が痛い、苦しい。どうして?なんで?伝えることさえ私は許されない?
スマホが鳴り、力の入らない手でそれをタップし電話に出る。
すると、すぐに怒ったような声が聞こえた。
『おい凛子!!おまえ今どこにっ』
「陸、くん」
『……は、待て、本当今どこにいるんだよ』
「出店の裏の、路地」
「…………5秒で行く」
通話が切れてすぐに、本当に陸くんは息を切らし、5秒程で来てくれた。
そして、その場に立ちすくむ私を見て、両肩を掴む。
「凛子、どうした。水瀬は?」
「……陸くん、私」
「なんだよ」
「私は、奏多くんに、好きって言ったらダメなのかな」
「は?」
「奪うってなに?奏多くんも私を好きって言ってくれた、私も奏多くんを好きになった……なのにっ」
「…………」
「私が奏多くんと付き合うことで、どうしようもなく悲しい思いをする人がいるのっ……」
ずっと我慢していた気持ちが決壊し、それが涙になって溢れ出す。
助けて、苦しい。初めて人を好きになったの。好きだって言われて幸せで、嬉しかった。奏多くんの彼女になりたかった。隣を歩きたかった。
けど、私のせいで愛理先輩は一人になるの?
どの選択をしたら正解なの?私だけが幸せになんて、なっていいの?
「落ち着け凛子」
突然、身体を引き寄せられ、大きな身体に包まれた。ぎゅっと力を込められて、それはまるで大丈夫だと私に言い聞かせているようで、余計に涙が溢れる。
「全部、決めるのはお前と水瀬だよ」
「…………」
「大丈夫だ。どんな道を選んでも、凛子は間違ってないし悪者じゃない」
ドンッと大きな音がした。花火が上がったんだ。その光は陸くんの顔を照らした。そして気付く。陸くんの表情が、どうしようもなく切なそうなことに。
「……絶対、何があっても、俺は凛子の味方だから」
ちぎれた恋心を拾い集めるように、陸くんは優しい言葉をくれた。
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