告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜
「奏多くん、ま、待って」
「待ちたくない」
「ねぇ、先輩はっ」
「俺の気持ちは、俺のものだから」
────奪わないで。
脳内で愛理先輩の言葉が反芻する。
知ってるよ、分かってる。奏多くんの気持ちは奏多くんのものだし、私の気持ちは私のもの。それが大前提だ。
けど、それなら私達が足踏みする理由は何?大切なことなんじゃないの?奏多くんにとって。
だから、そんな苦しそうな表情なんでしょ?何かに抵抗するように、なのに手放さないように、ゆらゆらと揺れている。
「凛子、俺は」
その時、スマホから着信音が鳴った。それは私のものではなく奏多くんの物で。
けど、一向に奏多くんは電話に出ようとしはしない。
「奏多くん、電話」
「平気」
「ねぇ、奏多くん」
「俺は今、凛子と話したい」
「分かったからっ」
「凛子────」
「じゃあ、なんでそんなに辛そうなの」
着信が止まる。私の問いに、奏多くんはぐっと押し黙った。
私の胸に、一つの答えが浮かび上がる。ずっと目を逸らして、考えないようにしていた一つの答えが。
私は奏多くんの手首を掴み、顔を下から覗き込む。
そして、ひゅっと息を吸い込み、その考えを口にした。
「奏多くん、もう、やめようか」
「…………は?」
「私……奏多くんとは付き合えない」