告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜
私は驚き後ずさった。そこには、私を無表情で見下ろす水瀬くんが立っていたからだ。
何か言いたげに、じいっと大きな猫のような目でこちらを見つめている。ダラダラと汗をかく私を他所に、水瀬くんはロッカーの一つを指さした。
「そこ、俺の」
「え?あ、ご、ごめんっ」
「いや」
私が退くと、水瀬くんはしゃがんでロッカーから教科書を取り出す。そして、そのまま立ち去るのかと思いきや、立ち上がると再び私を見下ろした。
もうどうしたら良いのか分からず、涙が出そうなほど緊張し、顔に熱が集まっていく。なに?私何か変なこと言っ────。
「予約制ね」
ボソリ、水瀬くんの声が私の耳に届いた。その言葉に含まれる感情が何なのか、一切理解は出来ないが、きっとこれは馬鹿にされている。
聞かれてしまっていたことを理解し、ボボボッと身体中が熱くなる。
「(うそ、恥ずかしい、最悪だ……!!)」
水瀬くんはズボンのポケットに片手を入れたまま、朝と同じようにふっと薄い唇の口角を上げ、くるりと私に背を向け教室に入って行った。
わなわなとその後ろ姿を見ていた私の肩を、先程まですっかり気配を消していた有菜ちゃんがポンと叩いた。
「なんか、ごめん凛子……」
「死にたい、もうダメだ……」
「そんなこと言わないで!!」
たまたまとはいえ、同じ人物、よりによってモテ男子水瀬くんに二度も恥ずかしいところを目撃されてしまい、もう私はこの先の学校生活を上手くやっていけるのか不安になった。
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