告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜
「もう、好きじゃなくなった」
出来るだけ傷付けるように、わざと酷い言葉を選んだ。そして私の思惑通り、奏多くんは酷く歪んだ表情をした。
お願い、もう私を嫌いになった方が楽になれる。絶対に幸せになれるよ。
私は泣かないようぎゅっと拳を握りしめ、わざとへらりと笑顔を作る。
「好きになってくれて嬉しかった。ありがとう」
カシャンとブランコから立ち上がる。奏多くんは下を向き動かない。
早く行かなきゃ、この場からいなくならなきゃ。そうしないと、今にも泣きそうだ。
「ばいばい、奏多くん」
奏多くんは振り返らなかった。
私は奏多くんをとり残し、その場から駆け出した。気を抜くと振り返りたくなる身体を抑え、スピードをどんどん上げる。
駅前を抜け、住宅街を抜け、必死で走る。
好きという気持ちを振り落とすように、宝物みたいな思い出を、奏多くんがくれた優しい気持ちを、全て振り落として、忘れてしまうくらいに。
ぼろぼろと涙が溢れる。
苦しい、悲しい、好き、ダメ。ぐるぐると脳内を色んな気持ちが回る。
「はぁっ……はぁっ……」
やっと家の前に辿り着き、ただいまも言わずに自分の部屋に駆け込んだ。
そしてベッドにダイブして頭から布団をかぶる。
「忘れろっ……忘れてっ……」
傷つけたくなかった。好きだと言いたかった。
本当は、奏多くんが、好きだ。
けど、忘れなきゃならない。私は好きな人に幸せになってほしい、さっき自分で決断したんだから。
「……っ、……ふ、ぅ」
────忘れるんだ。
だから、今だけは泣かせて。
ばいばい、奏多くん。
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