告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜



「もう、好きじゃなくなった」



 出来るだけ傷付けるように、わざと酷い言葉を選んだ。そして私の思惑通り、奏多くんは酷く歪んだ表情をした。

 お願い、もう私を嫌いになった方が楽になれる。絶対に幸せになれるよ。

 私は泣かないようぎゅっと拳を握りしめ、わざとへらりと笑顔を作る。



「好きになってくれて嬉しかった。ありがとう」


 カシャンとブランコから立ち上がる。奏多くんは下を向き動かない。

 早く行かなきゃ、この場からいなくならなきゃ。そうしないと、今にも泣きそうだ。

 

「ばいばい、奏多くん」



 奏多くんは振り返らなかった。

 私は奏多くんをとり残し、その場から駆け出した。気を抜くと振り返りたくなる身体を抑え、スピードをどんどん上げる。

 駅前を抜け、住宅街を抜け、必死で走る。

 好きという気持ちを振り落とすように、宝物みたいな思い出を、奏多くんがくれた優しい気持ちを、全て振り落として、忘れてしまうくらいに。

 ぼろぼろと涙が溢れる。

 苦しい、悲しい、好き、ダメ。ぐるぐると脳内を色んな気持ちが回る。



「はぁっ……はぁっ……」



 やっと家の前に辿り着き、ただいまも言わずに自分の部屋に駆け込んだ。

 そしてベッドにダイブして頭から布団をかぶる。



「忘れろっ……忘れてっ……」



 傷つけたくなかった。好きだと言いたかった。

 本当は、奏多くんが、好きだ。

 けど、忘れなきゃならない。私は好きな人に幸せになってほしい、さっき自分で決断したんだから。



「……っ、……ふ、ぅ」



 ────忘れるんだ。

 だから、今だけは泣かせて。

 ばいばい、奏多くん。





※※※※
< 150 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop