告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜
「陸くっ」
────グイッ
私の言葉を遮るように手を引かれ、奏多くんを置いてその場から駆け出す。
特別教室しかない階まで走り、音楽室の前でやっと陸くんは立ち止まる。そしてやっと陸くんは振り返った。
その表情はあまりにも真剣で、私の心臓が大きく鳴る。
「……ま、待って。陸くん、冗談だよね」
「冗談であんなこと言わねぇだろ。好きだから助けてたし、好きだから嫌がられてでも和解したかった」
「でもっ、それなら私……陸くんに色々話して……」
「俺は好きな女には幸せになってほしい」
「…………」
「本当は自分が幸せにしたいけど、今それが凛子の幸せに繋がらないって分かってるからな」
陸くんは私の手を握る手にぎゅっと力を込めた後、すぐにそれを離す。
そして、いつものように、なんでもないように笑った。
「俺はいつだって凛子の味方だ」
「…………陸くん」
「だから、凛子は余計なこと考えずに自分の気持ちに素直でいろよ。両想いなんだから」
「ねぇってば」
「煽ったから、どうにかうまく転がればいいんだけど」
「聞いて」
好きな人に幸せでいて欲しい。その気持ちは痛いほど分かる。
けど、自分にそんな思いを抱いてくれている人がいるなんて、思ってもみなかった。
私は陸くんの肩を掴み、陸くんの言葉を遮る。
「陸くん、ありがとう」
陸くんは私の言葉に驚いたように目を見開くと、切なそうに目を伏せた後、またなんでもないように笑った。
「顔、りんごみたいに赤いぞ」
この笑顔の反対側には、色んな想いがあったんだ。それを知り、私の心はどうしようもなく苦しくて嬉しくなった。
けど、私は陸くんを好きにはなれない。
好きな人に幸せになってほしい、私も同じなんだよ陸くん。
だから、私もその幸せを願ってこの想いに蓋をするしかないんだよ。
────校舎にチャイムが鳴り響いた。
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