告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜
「けど、私がいるから奏多くんと愛理先輩のバランスが崩れるの」
「違う」
「奏多くんが悩んでるとこ見たくない。私がいなければ、先輩も安心していられる。今が辛くても奏多くんだって楽になれる」
「そうじゃないでしょ」
「大体、あの二人の方がずっとお似合いだし、そのうち奏多くんも気付くよ──」
「いい加減にしなよ!!」
突然怒鳴られ、びくりと肩が跳ねる。何で有菜ちゃんがそこまで怒るの?
有菜ちゃんは深いため息を吐くと、私の両肩を掴んだ。
「今凛子が話してること全部、水瀬と先輩の問題でしょ」
「…………それは」
「そんなの二人が解決すればいい話でしょ?凛子と水瀬の恋愛には、全く関係ない問題なの。なのに水瀬が凛子を待たせたりしたからいけないの」
「…………」
「凛子が水瀬と付き合おうと何しようと、先輩は立ち直るときは立ち直るし、ダメなときは自分でなんとかしなければいけないの。とにかく、凛子は関係ない」
────私は、関係ない?
「それに、楽になれるってなに?水瀬は会えなくても毎日凛子に連絡をくれてたんでしょ?」
「楽になれたら、幸せになれるの?」
「水瀬が一度でも、凛子に楽になりたいなんて言ったことあった?」
「何度でも聞くよ、凛子はどうしたいの?」
無理やり蓋をした気持ちをこじ開けるように、有菜ちゃんの言葉が次々と心に入り込んでくる。
あぁ、ダメだ、決めたのに。
あの日、奏多くんへの気持ち、貰った思い出は全部振り落としたはずなのに。
ずきずきと胸が痛む。この痛みがある限り、私はずっと、ずっと────。
「ない」
「凛子」
「言われたこと、ない」
「……うん」
「本当は、先輩に奏多くんを、あげたくない」
蓋が外れて、気持ちが弾けた。
もう、先輩が何と言おうときっと今の私は聞いてあげられない。
「私は、奏多くんが好き」
有菜ちゃんは嬉しそうに笑い、私をぎゅっと抱きしめた。
「知ってるよそんなこと」
「けど私……奏多くんにもうやめようって言っちゃった」
「そんなの簡単でしょ」
「え?」
有菜ちゃんはまるで当たり前かのように口を開いた。
「今度は凛子が予約すればいいじゃん。告白予約」
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