告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜




「なんか甘い匂いする」



 水瀬くんが二人の会話の流れを切る。すると、有菜ちゃんは突っ伏していた身体を起こして私を指さした。


「さっき小夏にチョコ貰ったの。いいでしょ〜」
「え?片山さんチョコ持ってるの?欲しい!小腹空いてるんだよね」
「勿論良いよ」
「後で百倍返しな」
「百倍は無理だろ。けど、後で何かおかえしするわ」


 高田くんは、男子の中でも話しやすい部類だ。明るくて裏表ない感じが好感を持てるし、何より有菜ちゃんと仲が良いから信用できる。

 ポケットから最後のチョコを取り出し、高田くんの手のひらにそれを乗せようとしたとき、手が伸びてきて、ひゅっとそれが消えた。

 一瞬皆んなが何が起きたのか分かっていなかったけど、目の前に座る水瀬くんがチョコの包み紙を開き、パクリと口に放り込んだところで高田くんがやっと口を開く。



「ちょ、おい!奏多!それ俺の!」
「違うだろ」
「は?なんなんだよお前っ!俺のチョコ〜」
「このチョコは俺のだろ」



 このチョコは俺のだろって、どういうこと?

 ばちりと、やけに真剣な表情の水瀬くんと至近距離で視線が交わる。相変わらず、人の心を読むようにじいっと目を見る癖があるんだろう。私は水瀬くんのそんなところがやっぱり苦手だ。口内からチョコがなくなったのか、ぺろりと唇を舐めるその表情が、どこか大人っぽくて恐ろしくなる。
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