告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜





「……え?」



 突然の告白に、少しの間が空いてしまった。今まで有菜ちゃんのそんな素振り、見たことない。

 有菜ちゃんは話を続ける。



「実は、小さな時近所の仲の良かったお兄さんに、ちょっと身体触られたことがあって」
「……それって」
「結構な騒ぎになったし、私自身年を追うごとに自分よりデカくなってく男子を見ると、あの時のショックを思い出して一定の線を引いちゃうんだ」
「……うん、うん」
「力では絶対に敵わない相手だからさ、男子って。高田は幼馴染だから平気だけど」



 ────有菜ちゃんには、不思議なくらい男子の影がなかった。私には恋バナを振ってくるのに、自分のことになると上手く逸らす。たまに連絡先を聞かれても、のらりくらりと交わしているし、私が男子相手に困っていると、間に入ってくれていた。こんなに裏表もなくて優しくてすごく可愛いのに、なんでだろうとずっと思っていたんだ。

 そんな事件があったように見えないほど、有菜ちゃんはいつも明るくて弱いところを見せない。そして、人の気持ちを汲み取るのが上手だ。

 黙っていたら私は気付くことはなかったのに、何で話してくれたの?

 私が口を開こうとしたとき、右手に重なる有菜ちゃんの手が小さく震えていることに気が付いた。



「ごめん、こんなこと話しても困るだけかもだけど。凛子だけに無理させたくなかった」
「……有菜ちゃん」
「過去ってさ、消えないよね。だから平気なふりして生きてきたけど。全然大丈夫になんてなれない」
「…………」
「けど、今初めてこの事を凛子に話してみたら、少しだけ進んだ気がする」



 有菜ちゃんは私のために自分の辛い過去を話したんだ。

 グッと喉の奥から熱いものがせり上がり、鼻が痛くなる。視界もゆらゆらと揺れてきた。そんな私を見た有菜ちゃんは、優しく笑う。



「だから、凛子も少しだけ話して、進んでみようよ」
 


 私は俯き、ぼたぼたと目から零れ落ちる涙を拭くこともなく、何度も頷いた。そして、涙と一緒にずっと心にあった言葉が零れ落ちる。



「────私、こんな自分が、ずっと大嫌いだった」





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