告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜



「けど、全然楽じゃなかった」
「……うん」
「今でも、お前が傷付いて泣いてる顔が、ふとした瞬間に頭に浮かぶんだよ」
「…………」
「あの時は確かに楽だったかもしれない。けど、お前が泣いて正気に戻って、そのタイミングで転校することが決まって」
「……そうなんだ」
「……謝れないままあの場所を離れて、ずっと忘れられなかった」
「…………」
「結局、凛子を傷付けるくらいなら、俺一人が傷ついてる方が良かったんだ」
 


 あの頃のように凛子と呼ばれて、胸がグッと詰まった。

 陸くんがしたことは到底許せない。けど、もし私が同じ立場になったとしたら、同じことをしないなんて言い切れない。

 今よりずっと幼かったあの頃、ずっと私を勇気づけコンプレックスさえ笑い飛ばしてくれた陸くんは、変わってしまったわけではなかったんだ。本当は今日まで、私と同じくらい苦しんでいたのかもしれない。

 そう思うと、責めようとしていた気持ちが萎んでいく。





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