告白予約。〜猫系男子は赤面少女に夢中〜




 涙が止まらなくて、両手で顔を覆う。悲しいんじゃない、やっと心を解放された反動だ。



「……凛子」



 通学時間にしては少し遅い時間帯に、駅前のベンチに座る高校生が二人。しかも片方の女子が泣いているとなれば、きっと目立つ。

 陸くんは困ったように私の名前を呼んだ。苗字ではなく名前の方がしっくりくるのは、過去に積み重ねた時間のせいだと思う。

 しばらく無言の時間が続き、やっと私は落ち着いて言葉を発することができた。



「確かに、陸くんがしたことで……傷付いたし、そのせいで私の生き方もだいぶ変わったと思う」
「…………」
「ずっと自分なんてって思ってたよ、自分が嫌いだった。けど、最近……こんな私でもいいんだよって言ってくれる人達がいるんだ」



 脳裏に浮かぶのは、優しい親友と、私を好きだという彼。

 赤面症で、こんな自分を恥ずかしく思っていた私を、なんだそんなことで悩んでんの?と笑い飛ばすように、なんでもないように隣にいてくれる。下を向いて何も言い返せない私のことでさえ、肯定してくれる。

 そんな彼等のおかげで私は────。



「理由が知れて、本当によかった。あの時、陸くんに嫌われてなくてよかった」
「……嫌いになんて、なれねぇよ」
「嘘を見抜けないほど辛かったから」
「それは、ごめん」
「けど、もうこれで前に進めるよ」



 サラサラと、過去に縛られ俯く私が、心の中からいなくなっていく。

 もういいんだ。自分のことを好きになってもいいんだ。

 私は立ち上がり、座ったまま驚いた表情で、私を見上げる陸くんに視線を向ける。



「陸くんが、赤面症の私を笑い飛ばしてくれたから、あの頃の私は笑ってられたよ」
「…………」
「嫌なことばかりが頭に浮かぶけど、思い返すといい思い出もたくさんあった。だからもう、私は大丈夫だから」
「……凛子」
「これからは、友達とはいえないけど。同級生としてよろしくね」



 友達には戻れない。ここまでお互い傷を負っているんだから、それは無理な話だ。

 私の言葉に、陸くんはゆっくりと立ち上がる。そして、私の頭に手を置いた。



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