竜王陛下のもふもふお世話係2~陛下の寵愛はとどまるところを知りません~
 じっと様子を見守っていたゴーランが落ち着いた声で告げると、牙を立てていた魔獣は今度はジェラールを睨む。

[そっちは?]
[俺の主で、この娘の夫だ]

(ちょっ、何言ってるの!)

 ジェラールが主だというのはいいとして、後半部分でとんでもない大嘘を言っている。
 狼狽えるミレイナに対し、魔獣は少し落ち着いた様子を見せた。この場で唯一の成獣であるゴーランの言葉に安心したのか、その場に座り込む。

[じゃあ、敵じゃないんだな?]

 魔獣はそう呟くと、ぱったりと意識を失った。

[え!]

 ミレイナは慌てた。まさか死んでしまったのかと思ったが、ゴーランは[安心して意識を失っただけだろう]と言う。

「その魔獣はなんと?」

 ジェラールは眉を寄せ、ミレイナに尋ねる。ジェラールが完全に理解できているのは、ミレイナが話している部分だけだ。

「人間が罠を仕掛けているのを見たと」
「そうか」

 険しい表情のまま、ジェラールは倒れている魔獣を見下ろす。
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