竜王陛下のもふもふお世話係２～陛下の寵愛はとどまるところを知りません～

　ジェラールは彼らを一瞥すると、屋敷の玄関を開け放った。

「な、何事だ」

　騒ぎに気付いたスターラック家当主──ブレンダンが屋敷の二階から下りてきた。そして、ジェラールの姿に気付き顔色を青くする。

「これはジェラール陛下、いかがなされましたか？　まずは応接室に──」
「ここでよい。急いでいる。用件だけを言う。お前のところの娘が、今日ミレイナと一緒だったはずだ。どこにいる？」

　ブレンダンに目配せされた使用人が慌てた様子でマリベルを呼びに行く。マリベルはさほど待つこともなく、玄関ホールへと下りてきた。

「ジェラール陛下、こんばんは」

　のんびりとした所作に、苛立ちが募る。

「ミレイナを王宮に乗せて帰ったことに、間違いはないか？」

　ジェラールはマリベルの挨拶を無視すると、本題に入る。

「間違いありませんわ。王宮の正面口、馬車乗り場の手前で、急にミレイナ様がウサギ姿に変わってしまわれたのです。そして、あっという間に走って行かれてしまいました」

　マリベルは迷うことなく、すらすらと答える。