竜王陛下のもふもふお世話係2~陛下の寵愛はとどまるところを知りません~
 ジェラールはゴーランの目の前に降り立つと、人型へと姿を変える。周囲を見回す限り、ミレイナの姿はなかった。

「ゴーラン、ミレイナは?」

 ジェラールの問いかけに対し、ゴーランは道の脇の草むらに鼻を突っ込む。その鼻先にあるものを見て、ジェラールはハッとした。

「これはミレイナの」

 それは、紛れもなくミレイナの耳飾りだった。ジェラールが手配して作らせたもので、今日の昼間にもずれていた物を付け直してやったから見間違えるはずがない。

「ミレイナ本人はどこだ?」

 ゴーランに問いかけると、ゴーランは「クウン」とか細く鳴く。

「ここにはいないということか?」

 なんとなく、ゴーランはそう言っている気がした。

 ミレイナは最後にここに来た。そして、耳飾りを落とした。けれど、今はここにはおらず、ゴーランは匂いを追えない。
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