竜王陛下のもふもふお世話係2~陛下の寵愛はとどまるところを知りません~
 顔を覆うように両手を上げ、痛みに備えてぎゅっと目を瞑る。しかし、痛みは来ずに代わりにバチンと大きな衝撃音がした。
 目を開くと、足下に今飛んできたと思われる弓が転がっている。

(あ、ジェラール陛下のカメオ!)

 以前ジェラールが贈ってくれたカメオのネックレスには防御の加護がかかっている。すぐにその効果だとわかった。

「捕らえろ!」

 いつの間に現れたのか、ラングール国の軍服に身を包んだ人々が木々の合間から現れる。

(どうしよう。怖い……)

 今度こそ絶体絶命かと思い、ミレイナは咄嗟に一番近くにいた子フェンリルを抱きしめる。しかし、竜人達は予想に反してミレイナとは別の方向に向かって一斉に走り出した。

[俺達も加勢するぞ!]

 シェットが叫ぶと、反応するようにエミーユとイレーコ、ラトもそちらに向かって走り出す。
 数分後、ミレイナは目の前に広がる光景を見て呆然とした。

「ブレンダン。これはどういうことだ?」

 凍てつくような眼差しを送りながら冷ややかな声で問いかけるのは、ここにいるはずもないジェラールその人で。
 その足下には、軍服姿の竜人に押さえつけられる数人の竜人が横たわっていた。そして、その中心にはウォルトに押さえつけられるブレンダン侯爵がいた。

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