竜王陛下のもふもふお世話係2~陛下の寵愛はとどまるところを知りません~
(あの中に薬が混ぜ込んであったのね)

 ラルフがジェラールに説明している話を聞く限り、獣人向けの薬は獣人以外には効かないようだ。それ故、薬が入っているとは気付かずに口にしてしまう獣人が多いという。

(じゃあ、私が馬車から落ちたのも)

 落ちる瞬間、お尻の辺りに衝撃を受けた気がした。馬車が揺れたせいだと思い込んでいたけれど、きっと意図的に押し出したに違いない。
 無蓋馬車で来たのも、乗せてあげると言ったのも、全ては最初から計画したことだったのだ。

「先日魔獣達を救出した連中ですが、彼らもブレンダン侯爵が糸を引いておりました。ミレイナが魔獣飼育のシステムを考案して成果を出すのが気に入らず、逆に違法業者のような負の面が出てきたことを印象づけたかったようです」

 ラルフは書類を捲りながら、淡々と報告を続ける。

(ひどい! 許せない)

 ミレイナは元々滅多なことでは怒らない温厚な性格だけれど、それでもこれ以上は許せないと思う一線がある。今回の件は、それを遥かに超えていた。
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