竜王陛下のもふもふお世話係2~陛下の寵愛はとどまるところを知りません~
 ジェラールはそれに気付いたのか、ミレイナの腰に回した手に力を込め、耳元に口を寄せる。

「ミレイナ、俺を見ろ」

 ハッとして顔を上げると、青い瞳と視線が絡んだ。

「俺だけを見ていろ」

 曲に合わせて、ジェラールはミレイナをリードする。それは、ダンスの先生よりもはるかに踊りやすく、自然に足が動き出す。

 なんだか楽しくなってきて、ミレイナは口元を綻ばせた。すると、ミレイナを見下ろしていたジェラールが優しく微笑む。

(私、夢を見ているのかな?)

 なんて幸せな夢だろうと思った。
 もし夢ならば、このまま醒めないでほしい。
 憧れても絶対に手が届かない人が、背伸びすればキスできてしまいそうな距離から微笑んでくれている。

 けれど、ミレイナの願い虚しく、幸せな時間は曲の終わりと共に訪れた。

(名残惜しいと思っているのが、私だけでなければいいのに)

 ミレイナはそんなことを思いながら、ジェラールと繋いでいた手が離れるのを見つめる。

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