片桐兄妹の言うことにゃ
猫舌
嫌いなものがある。
冬の朝一番の冷たい水道水、魚の骨、満員電車のピンヒール、癖っ毛、居場所のない教室。
燐は横にあった温かさに本能的に擦り寄った。
昨夜、一緒にゲームをしてリビングで雑魚寝をしていた兄、藍だろう。
くしゃみの音に、燐の目が覚める。
右側に肘をついてゆっくり起き上がった。隣に眠る人間の方へ視線を向ける。
……髪の毛が、黒い。
藍の髪は昨日の夜までは金に近い茶色だったはず。
目を凝らした。
カーテンから差す光が床に反射して眩しい。
黒髪の人物がごろりと燐の方へ寝返りを打つ。
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