片桐兄妹の言うことにゃ
ただの確認の言葉に、燐は微動だにしない。
「ここでいつも藍が出るの待ってんのか。そんで夕方になったらバイトに出る」
さらさらと推測を口にする。
「藍に言わねえの?」
「……なにを」
「学校で、」
ちょうどバイブ音が鳴った。燐のものではなく、千治の。
ポケットから携帯を出して、電話に出る。
「もしもし……あーもうすぐ着く」
そう言って切った。相手は藍だ。
燐は視界の端で千治の動作を確認する。
「ま、俺には関係ねえか。じゃあな」
立ち上がり、階段を下っていく。
一階の片桐家のチャイムを押す音が聞こえた。