片桐兄妹の言うことにゃ
七歩袖から覗く両腕には五つの面が散らされている。
般若、狐、烏天狗、鬼、おかめ。
出会った時にはもう既にそこにあった。
「まあ、良いんだけど」
月明かりが彼女を照らす。
微笑む姿は、女神か、悪魔か。
「なんかあった?」
「何も」
「嘘だねえ」
藍を背中から抱きしめる。その放つ殺気に、苦笑いを隠せない。
「後ろから刺すなよ」
「えーそんなことしないって。最後に見るのは私の顔が良いでしょ?」
「ま、それもそうなんだけど」
腕を掴んで前から抱きしめ返す。
「寝るか」
煙草をテーブルに放った。