片桐兄妹の言うことにゃ
驚き、心臓が口から出ていないことを確認する。気配がなかったのか、それとも自分が気づかなかっただけなのか。
柵に浅く腰掛けた千治がポケットに手を入れたまま「よお」と声を出した。
「……こんにちは」
一応、藍の知り合いなので挨拶は返しておく。
そして関わると面倒くさそうだと本能的に悟り、逃げる算段を立てる。
「またサボりか」
そういうあんたもだろ、と喉で引っ掛かったことに安堵を覚える。
「ハブられてること、藍には言ってねえの?」
しかし、その言葉に表情を固める。
「藍にそのこと、」
じろりと睨み上げた。