片桐兄妹の言うことにゃ

その晩、千治も和室で川の字になって眠っていた。

最後に布団に横になったのは燐だったが、もう突っ込むのも起こして帰すのも面倒で、千治の隣で横になった。

「ここ」

聴こえた声に、視線を向ける。
千治は目を閉じていた。

「良い場所だな」

寝言かどうかは分からなかった。
しかし、寝言ならば返事はしない方が良いだろう。

良い場所があるなら、悪い場所もあるのだろうか。

ピアスが沢山つけられた耳を見る。数を数えようとして止めた。

燐は毛布を被り、目を閉じる。
良くても悪くても関係ない。
ここにしか、帰る場所はないのだから。

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