片桐兄妹の言うことにゃ

にこりと柔和な笑顔。嘲笑う千治とは違って、人間らしいそれに燐はぱちくりと瞬きする。

「お楽しみは終わった?」
「俺こんなガキ趣味じゃねーわ」
「ああそっか。熟女好きだもんね」
「こいつ、片桐燐」

頭上で大変失礼な会話がなされているが、燐は疲れて黙っていた。

「片桐?」
「藍の妹」
「へー、なるほど。それであの喧嘩。仕込まれてんの?」

それは燐に対して問われたものだったが、代わりに返答したのは千治だった。

「いや、喧嘩したのあれが初めてだろ。実地なしセンスだけであれ」

その通りだ。
燐は初めて人と喧嘩らしき喧嘩をした。

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