片桐兄妹の言うことにゃ

喧嘩と言っても、掴み合いと殴り合いだけだが。

「そりゃ才能あるね」
「あ」

崩れ落ちるように気を失った燐をなんとか千治が掴まえた。名前を呼ぶが、起き上がる気配もない。

そのまま抱き上げた。

「へー、片桐兄妹か。あんま似てない」

高陵がその顔を覗く。まじまじと見たものの、藍の顔をそれほど観察したことがないのに気付いた。

「仲は良いけどな」

兄の背中に隠れる燐の姿が脳裏に浮かぶ。千治はそのまま歩き出す。

その方向が保健室ではないことから、高陵も後へ続く。

「午後の授業は?」
「フケる」

即答だった。

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