片桐兄妹の言うことにゃ

鮫貝の病院に千治のバイクで連れて行かれ、燐は待合の椅子に座っていた。横で暇そうに千治が足を組んでいる。

きょろ、と燐は辺りを視線だけで窺う。

「あの、青い人は?」
「青?」
「髪の毛」

顔が痛く、長く喋ることは憚れた。
その単語で、千治は全てを悟る。

「あいつは高陵(こうりょう)(かおる)。バイト中」
「かおる……カオリン」

早速あだ名がつき、千治はケラケラ笑った。その内に鮫貝が現れる。久々に笑う千治に驚き、そして訝しがる。
説明を求めるように燐へ視線が移った。

「はるちゃんが壊れた」
「はるちゃん……」

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