片桐兄妹の言うことにゃ

「今日クラスの女と喧嘩してたのを回収してきた」
「女子の喧嘩、こえー」
「あいつ結構センス良いんだよな」

喧嘩も、料理も。
鮫貝は膝に頬杖をついて千治を見た。それに気付き、千治も見返す。

「はるちゃん、ねえ……」
「なんだよ」
「いや、達朗(たつあき)みたいだと思って」

懐かしい名前に、千治が目を細めた。
名前を出した側の鮫貝もつられて苦く笑う。

「もう三年か……」
「ああ」

達朗が死んでから。

言葉にせずとも二人の間には同じ感情が流れた。

燐の入っていた診察室の扉が開き、千治が顔を上げる。

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