片桐兄妹の言うことにゃ
引き戸で区切ることはできるが、殆ど閉められることはない。
和室の隅に追いやられた小さなテーブルの上に、燐の私物は並べられていた。
「親帰ってこねーから、必然的に二人」
「築何年だよここ……」
「60年はいってなかった気がする」
耐久性に不安がある。
温くなってやっと飲める紅茶に、燐は口をつける。同じタイミングで千治もコーヒーを飲み干した。
「とりあえずありがとう。この恩は多分忘れねえわ」
「忘れても良いけどよ、命は大切にな」
「善処する」
する気がなさ気な返事だ。深くは考えず、立ち上がった千治に続いて立ち上がる藍。