片桐兄妹の言うことにゃ

しゃがんで、未だしょんぼりしている燐の顔を覗いた。

顔の腫れは引いている。冷やしピタが額に貼っているのが見え、熱を出したのだと推測した。

正直、怖気づいてまた不登校かと思っていた千治だが、考えを改めた。

「のーちゃん……」
「あ?」
「黒い猫ちゃん……」

猫にも敬称をつける燐に、千治は呆れた顔をする。

「が、何」
「触ってみたかった」
「よくここに飯食いに来てんだろ」

その時に触れば良いだろ、と千治は言外に告げた。
しかし燐の表情が変わることは無かった。

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