片桐兄妹の言うことにゃ

燐は何度か瞬きをして眠そうに目を擦る。

「でも触ったことない」
「まあまた今度な」

てきとうに約束を交わし、宥めた。千治は窓の外に視線をやる。

「はるちゃん、何しにきたの」

約束に返事はせず、燐は尋ねた。

「様子見。熱出たのか?」
「もう下がった……と思う」

まだぼんやり眠いが、今朝のような怠さは無くなっていた。額に貼ってあったものを取り、二つに畳む。

そこへ千治が手を伸ばし、熱を測る。体温が同じだったのか、触れた場所が溶けるようにして重なった。

それに驚き、固まり、動かない千治と、されるがままになっている燐。

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